インタビュー / 地域おこし協力隊、稲垣侑子の仕事

2016 インタビュー / interview

稲垣侑子さんは地域おこし協力隊として2014年に那珂川町に移住した。稲垣さんが実践したアートによる地域おこしとはいったいどんな取り組みなのだろうか?

───まず那珂川町に地域おこし協力隊として赴任したきっかけを教えてください。

稲垣:2013年にKEAT小砂環境芸術祭に参加したさいに住民の方から「今度、那珂川町がアートやデザインを通じて町興しをしてくれる人材を募集する」という話を聞き、興味を持ったので応募しました。
また小砂地区は陶芸が盛んで、いくつも窯元がある焼き物の町だという点にも惹かれました。

小砂で穴窯体験をする稲垣さん

───大学生時代はどんな活動をしていたんですか?

稲垣:武蔵野美術大学彫刻学科でブロンズやセラミック、モルタルなどでオブジェをつくり、それを土地に敷き詰める「土地ドレ」というシリーズを制作していました。展示には広い土地が必要で、地域アートイベントなどにも積極的に参加してました。

「土地ドレコレクション」稲垣侑子

───地域おこし協力隊の生活について教えてください。

稲垣:住居は町が住宅を斡旋し、補助金で家賃が支払われます。私の家はメゾネットの1、2階4LDKで、一室を作業部屋にして作品制作もしています。住居に関しての月々の個人負担は光熱費ぐらいで、都心ではまず考えられない環境です。
福利厚生は健康保険、厚生年金、雇用保険に加入します。基本的に週4勤務で、業務中は公用車を使用します。地域おこし協力隊の事務所もありますが、私は殆ど自宅と小砂地区を行き来していました。

制作風景

───稲垣さんが地域おこし協力隊としておこなった取り組みについて教えてください。

稲垣:アートはやはりまだ地域住民にとって敷居が高いという先入観があるんですね、まずそれをなくすために「土地ドレ」シリーズを地域住民の方々を巻き込んだリレーショナルアートに変化させました。耕作放棄地や休耕田などを地元の人と一緒に耕し、地面の模様に沿ってラディッシュを植えました。農業の合理性に少し遊びをとり入れることで、地域の人にもアートを身近に感じてもらう事が出来たと思います。野菜は収穫して小砂環境芸術祭のクロージングで来場者に配りました。

地域住民との作品制作

稲垣:一緒に制作を行う事で、住民の方が作品から着想を得て自主的にイベントを考えるようにもなりました。義援金収穫祭では震災で被災した熊本の町に小砂から寄付をして、これは住民の方が積極的に動いてくれ実現したことです。また、小砂地区の奥様方とイベント限定の出張カフェ「お母ちゃんcafé」を立ち上げました。イベントなどを通して地元の食材を使ったお料理を提供して小砂の魅力を発信する団体です。売り上げの一部は美しい村の美観活動などに活用しています。

カフェでは、地元でその日とれた食材をふるまう。

稲垣:他には窯元の協力を得て、小砂焼きのカフェオレボウルをつくりました。これは那珂川町で出生児届けが提出された際の記念品にもなりました。2016年からは小砂の全ての窯元がカフェオレボウルを制作するようになり、出生児にはそれをお祝いとして贈呈する新しい慣習となっています。

絵付けした窯入れ前のカフェオレボウル

稲垣:最近では、少子化に伴い廃校になった小学校のグランドピアノを直し、ヨーロッパで活躍していたピアニストを招き夜空のピアノコンサートを開催しました。一枚2000円のチケットはすぐに完売し、おかげさまで継続して続けられるイベントととなりました。

───アートと地域はほんとうにさまざまな関わり方があるんですね。
今日はありがとうございました。

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